家庭裁判所調査官らが法に則って子らの最善の利益を考慮したのか,甚だ疑問を生じさせる調査官報告書です。

 

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●調査報告書23頁4行で,現状は「子の福祉を大きく害する状況ではないと考える」と記載されています。
しかしながら,法は,子の最善の利益を考慮するように規定されており(児童の権利に関する条約3条1項,児童福祉法第2条),被告はこのことを調査前に提出した書面でも明記していました。
それにもかかわらず,佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官は,子らにとってのどのような環境が「最善」であるかを検討せず,事実上,現状に特段の問題があるかについてしか判断をしていません。
つまり,現状に虐待と言えるほどの特段の問題がなければ,仮に相手が子を監護するほうが子にとって好ましいとしても,現状を維持させる判断をするということです。
このような判断が法に違背しているのは明らかなのですから,佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官の判断は,子らの最善の利益を考慮する上で必要な検討を怠り,子らの心情を蔑ろにしているのですから,意図的に法に違背した調査報告書を作成したことになります。

 

横浜家庭裁判所横須賀支部平成28年11月9日は,子を一方的に連れ去ることを「違法」と判示し,その抗告審である東京高等裁判所平成29年2月21日は,子を一方的に連れ去ることを「極めて不適切」と判示しています。
つまり,子を一方的に連れ去ることは,「極めて不適切な違法行為」となり,本件事件の子らにとっても,このような「極めて不適切な違法行為」によって父親や兄弟との別居を余儀なくされたことは,子らが原告に対して否定的な感情を生じさせる原因とならざるをえないものです。事実,このような事情を理解し始めている長男は,原告に対する否定的感情を抱いています。
二男も,長男と同様,事実を理解するようになれば,原告に対して否定的感情を増大させていくことになるでしょう。
また,子の連れ去りといった「極めて不適切な違法行為」の結果である監護環境を追認することは,裁判所が「極めて不適切な違法行為」を助長させることになります。
そうすると,被告が2人の子らを監護することが,子らの利益の観点でも,違法行為を助長させないという社会正義の観点からも,好ましいということになります。
そして,被告は上記の点を調査官調査の前に書面で主張していたにもかかわらず,佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官は上記の点についての検討をせず,子らの福祉を蔑ろにしているのですから,意図的に法に違背した調査報告書を作成したことになります。

 

●調査報告書23頁16行で,二男は別居親である被告に批判的な心情を抱いていることが記載されています。これについて,佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官は,その根拠を,被告が原告に意地悪をしたとの二男の発言に拠っており,その意地悪の内容は,被告が原告のパソコンにウイルスを送って壊したというものです。
しかしながら,被告が原告のパソコンにウイルスを送ったとの事実はありませんし,そもそも,ウイルスを送ってパソコンを壊すという,技術的困難を伴う荒唐無稽な二男の発言を,佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官が鵜呑みにして,それを根拠に二男が被告に批判的な心情を抱いていると解釈していることは,佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官の常識力や判断力に強い疑義を生じさせます。
また,被告がウイルスを送って原告のパソコンを壊したとの事実があったのか,二男をこの調査のために連れてきていた原告に確認することもできたでしょうし,被告への面接は二男の上記発言よりも後日だったのですから,佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官はウイルスの件を被告に確認することも可能でした。
それにもかかわらず,佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官は,二男の発言について何ら裏付けを確認しようとしなかったのですから,佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官は,意図的に結論を歪ませた調査報告書を作成したとの疑義が強く生じます。
なお,被告が原告のパソコンにウイルスを送ったとの事実はないため,原告は,虚言によって二男に被告に対する否定的感情を生じさせようとしたことになるのですから,これを考慮すれば,原告が子らの監護者として著しく不適切であるのは明らかです。

 

●二男は被告に対して,「優しい」(調査報告書21頁16行),「楽しい」(調査報告書22頁11行)との感想を述べており,また,二男は「みんなが私と同じ家族になりますように。」(調査報告書22頁24行)と,被告や長男とも一緒に暮らせるようになることを願っています。これらを総合考慮すれば,二男が原告の虚言に騙されて,被告が原告のパソコンにウイルスを送ったと嘘を思い込まされている状態でさえも,二男が被告に批判的な心情を抱いているとは言えません。
そのため,二男が被告に批判的な心情を抱いていることを前提とした佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官の判断は,全て失当となります。

 

●調査報告書24頁4行で,長男が原告に,二男が被告に否定的な感情を抱いていることは,いびつな現状だと記載されています。
しかしながら,既に述べたように,二男が被告に否定的な感情を抱いているとする根拠は,原告の二男に対する虚言の刷り込みの結果に拠るものですし,そもそも,二男の被告に対する肯定的な発言からすれば,二男が被告に否定的な感情を抱いてるとも認められません。むしろ,二男が被告に否定的な感情を抱いているとする,佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官の解釈こそが,自らの調査と矛盾するいびつなものだと言えるでしょう。

 

●調査報告書4頁5行で,原告は,被告が子らの監護者となった場合,被告とのトラブルが続くのも子らに悪影響なので身を引くべきなのか迷いがあり,現時点では考えが整理できていないと述べたことが記載されています。
しかしながら,我が国も批准している「児童の権利に関する条約」9条3項において,「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。」と規定されています。そのため,子が親と定期的な交流を持つことは,子の権利であり,親が一方的にその権利を侵害して良いものではありません。
そもそも,原告は以前にも,調停で定められた面会交流を不履行にし,履行勧告にも応じず,約半年もの長期にわたって二男を被告に会わせず,自らも長男に会おうとしなかったことで,原告は子の親と交流する権利を侵害した前科が既にあるのですから,原告が子らの利益についての理解に乏しいのは明らかです。
また,原告には,被告とのトラブルが続かないようにする努力をしておらず,それによって子らをトラブルに巻き込む挙に何度も出ています。
原告が子らの利益を考慮するのなら,被告との間にトラブルが生じないようにする努力をすることでしょう。
そのため,同居義務違反を発端として,面会交流不履行や繰り返される虚言等によって,被告とのトラブルを生じさせ続けている原告は,子らを巻き込み続けることによって子らの利益を損ね続けているのですから,被告は子らの監護者として著しく不適切です。

 

●佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官が判断の根拠としている,二男が被告に否定的な感情を抱いているとする解釈は誤っている以上,佐藤康弘,斎藤孝広両家庭裁判所調査官の結論も誤っていることになります。そして,長男が原告に否定的感情を抱いていることは,原告の言動の結果であり,二男が被告を意地悪だと思ったのは,原告が二男に虚言を吹き込んだ結果である以上,原告は子らの監護者として著しく不適格であると言えます。

 

●調査報告書9頁12行で,長男の学習机に貼ってある紙に記載された内容がカギ括弧で記載されていますが,一般に日本語表現において,カギ括弧はそのまま引用する場合に使われる表現方法です。
しかし,実際に貼られている紙は,ほとんどひらがなで記載され,内容も調査官らの記載とは一部異なります。
細かいことかもしれませんが,「神は細部に宿る」とも言いますし,このようなところにも,佐藤康弘,齋藤孝広両家庭裁判所調査官の怠慢ぶりが示されています。

 

 

以下は,調査報告書をテキスト化したものです。

 

調査報告書

裁判官 船戸容子 殿

平成30年12月28日
熊本家庭裁判所

家庭裁判所調査官 佐藤康弘
家庭裁判所調査官 齋藤孝広

事件の表示
平成29年(家ホ)第60号 離婚等請求事件(本訴)
平成29年(家ホ)第104号 慰謝料等請求事件(予備的反訴)

当事者等の表示
本訴原告(反訴被告):A(以下「原告」という。)
(訴訟代理人弁護士:久保田紗和)
本訴被告(反訴原告):B(以下「被告」という。)

調査事項
当事者間の子,長男C(以下「長男」という。)及び二男D(以下「二男」という。)の監護状況及び同人らの心情

原告の状況
1 生活状況(原告の陳述要旨)
原告は,原告の母名義の2階建て一軒家に二男及び原告の父母と暮らしている。原告宅から二男が通う幼稚園までは徒歩数分の距離にある。
原告は(略),勤務時間は午前9時から午後5時までである。(略)残業はなく,休暇も取得しやすいので,今後も同じ職場で就労を続ける予定である。月収は(略)。
勤務先まで車で通勤しており,所要時間は片道約20分で,午前8時15分頃に自宅を出る。二男の朝食は原告が準備しており家族揃って食べている。また,毎週木曜日は二男が弁当を持参する日で,原告がこれを用意している。
幼稚園が近所なので,二男の登園時には,原告だけでなく原告の父母もついて行くことが多い。幼稚園の迎えは,原告が終業後に行くこともあるが,多くは午後4時から午後5時の間に原告の父が行っている。原告は,午後5時30分過ぎに帰宅して,原告の母が作った夕食を家族揃って食べ,二男とテレビを見たりゲームをしたりして過ごし,二男と風呂に入って,午後9時から午後10時の間に二男と就寝している。
2 心身の状況(原告の陳述要旨)
被告とのトラブルから不眠や不安感が生じ,心療内科で抗不安薬を処方してもらうことがあった。しかし,薬に頼りたくないので,現在は通院しておらず,最後の通院は半年ほど前になる。日常生活は普通に送れている。
3 監護補助者の状況(原告の父母の陳述要旨)
(1) 原告の父母は,30年来,(略)を営んでいる。従業員は,原告の弟夫婦も含めて4名。1年後をめどに,原告の弟夫婦に経営を委ね,原告の母は退職し,原告の父は70歳まで手伝いをする予定である。
(略)からの仕事が多く,土日曜日に急に仕事が入ることも多い。稼働時間はまちまちであるが,午前8時半に出発して,E市近郊へ出向き,午後5時までには帰宅することが多い。
(2) 原告の父は,貸駐車場や貸事務所等を所有しており,これらの賃料収入も合わせると,(略)。原告の母も,貸地を所有しており,同様に(略)。原告の父母ともに負債はない。
(3) 原告の父は,毎朝4時に起床し,自転車でE市とF市を往復するトレーニングを続けている。(略)の持病があり,内科に月1回通院し,薬を毎日服用している。被告との紛争が生じるようになってから心療内科にも通院している。就寝前の薬は毎日服用しているほか,被告と二男の面会交流が近くなると気分が不安定になり,安定剤を服用することがある。
(略)
原告の母は,(略)の持病があり,月1回通院している。心療内科にも3週間おきに通院し,安定剤と眠剤を毎日服用している。(略)に母親を亡くし,精神的に衰弱して一時期心療内科に入院した。現在,日常生活は普通に送れている。
4 住居の状況(家庭訪問調査の結果)
一戸建ての2階建て住宅で,1階に3部屋2階に2部屋ある。家族はテレビがある1階のリビングで過ごすことが多い。リビングに続く仏間には家具はほとんどないので広々しており二男の遊び部屋にもなっている。1階のもう一部屋が原告と二男の寝室になっており,ゲーム機など二男の玩具がたくさん置いてあった。

5 今後の監護方針等(原告及び原告の父母の陳述要旨)
(1) 二男
ア 被告と二男の面会交流については今後も現状の方法を続けたい。減縮を求めるつもりは今のところない。被告との面会交流ではテレビゲームやタブレットのゲームで遊んでいることが多いようで,いつもゲームを覚えて帰ってくる。原告宅でもゲームの時間が増えてしまうが,来年から小学校に入学するので,ゲームばかりしないように生活習慣を整えていきたいと思っている。
イ 進路については,高校までは進学してもらいたいが,その後は本人の意向を尊重する。大学に進学するのであれば経済的支援はする。
(2) 長男
この1年間,長男と顔を合わせる程度の交流しかできていないことや被告の影響で長男が原告に否定的な感情を抱いていると思われることから,長男の引き取りは現実的には困難かもしれないと考えている。ただし,二男が長男のことを好きであることは知っているし,きょうだい一緒に暮らせた方がいいとは思うので,被告と揉めない形で長男を引き取れればベストだと思っている。
原告の父母は,原告が長男の親権者に指定された場合には,二男にするのと同じように,長男の監護を補助していく方針である。
(3) その他
ア 仮に2人の子の親権者が被告になった場合の原告と子らの面会交流について,子らのためには面会交流が必要だと思うが,一方で,被告とのトラブルが続くのも子らに悪影響なので原告は身を引くべきなのか迷いがあり,現時点では考えが整理できていない。
イ 交際相手がいると被告に述べた件について,実際は交際相手ではなく原告の父の会社の従業員(40代)である。交際相手がいると言えば,早く離婚ができると思っての行動であり,浅はかな考えだった。原告よりテレビゲームに詳しいので,原告宅に招いて二男の遊び相手になってもらうことがたまにあるが,原告とは異性関係にはない。
ウ 原告の父は,以前,被告のことを「きちがい」と評したことはあるが,日頃から家庭で被告の悪口を敢えて話題にすることはない。話題にしたくない。

被告の状況
1 生活状況(被告の陳述要旨)
被告は,被告の父名義の一軒家で,長男及び被告の父母と暮らしている。被告宅から長男が通う小学校までは子どもの足で徒歩15分ほどの距離にある。
被告は,(略)。勤務は平日のみで,月2回は遠方の(略)に出向くので,午前7時に家を出て,帰宅が午後7時になるが,そのほかは午前9時前後に家を出て,午後5時ころに帰宅している。年収は(略)。
朝は午前6時に起床し,午前7時前に被告が長男を起こす。長男はぐずることはないが,たまに被告が抱っこして1階まで下ろすことがある。朝食は必ず食べさせるようにしており,朝食の準備は被告がすることが多い。夕食は準備できる人が用意するのが習慣になっており,被告の母は仕事があるため家族揃って食べることは少ないが,長男一人で食べることはない。風呂は長男と入ることが多く,午後10時ころに長男と同じ部屋で一緒に就寝する。
休日は長男と過ごすことが多い。自転車が好きなので長男とサイクリングに出かけたり,長男が身体を動かすのが好きなので長男がやりたいことに付き合っている。

2 心身の状況(被告の陳述)
健康状態に問題はなく持病もない。

3 監護補助者の状況(被告及び被告の父母の陳述要旨)
(1) 被告の父は,(略),町内会の役員や,民生委員の仕事のみを続けている。時間に拘束されることはないので,掃除,洗濯などの家事全般も担っている。
被告の母は,(略)。勤務時間は午前5時半から午前8時ないし9時と,午後5時半から午後10時であり,ほぼ毎日出勤している。夜勤はなく,シフトの穴埋め等で不規則に出勤することもない。
(2) 被告の父の収入は(略)。被告の母の収入は(略)。被告の父母ともに負債はない。
(3) 被告の父は高血圧の治療のために2カ月おきに通院し,服薬を続けているが,日常生活に何ら支障はない。被告の母は糖尿の治療のために月1回通院し,服薬を続けているが,生活面に支障はない。

4 住居の状況(家庭訪問調査の結果)
2階建ての一戸建て住宅で,1階のリビングには,ソファー,テレビ,長男の学習机などがあり,壁には,子らの写真や長男の空手の賞状がたくさん飾ってある。2階に長男と被告の寝室がある。玄関ホールにはエアー式のサンドバッグがあり,長男はそこで日課のトレーニングをしている。

5 今後の監護方針(被告及び被告の父母の陳述要旨)
(1) 長男
ア 被告は,長男とは積極的にコミュニケーションを取るように努めており,特に風呂,寝る前,空手の送迎のときによく話を聴いている。今後も長男に悩みなどがあれば適切な助言等をしていきたい。原告からも,長男にもっと積極的に関わってもらいたいと思っているが,原告は長男との面会交流に消極的で,学校行事や空手の大会の日程等を伝えても見に来ることはなく,長男にとって好ましい状況ではないと考えている。
被告は,長男の前で,原告のことを非難することはなく話題にも挙げていない。原告と長男には良好な関係を築いてもらいたいと考えている。
イ 進路については本人の意向を尊重する。大学進学するなら経済的支援をする。
(2) 二男
ア 面会交流中の二男の様子を見ていると,わがままになっていると感じることがある。原告は,二男が嫌がるという理由で公文教室を辞めさせたようだが,我慢させることも必要だと思う。被告が親権者となってメリハリのあるしつけをした方がよい。
イ 原告が被告に悪感情を出すのを見ていて二男は嫌な気持ちを抱いている様子である。面会交流中に「G市にいたい。E市に戻りたくない。」と言うこともあり,無理して原告と生活していないか心配である。二男を引き取った際には,二男の気持ちを丁寧に聴いてやりたいと思っている。(略)。
ウ 長男と二男の関係は良好であり,きょうだいは一緒に育てるべきである。長男自身ももっと二男と遊びたい,一緒の小学校に行けたらいいと言っている。被告としても,そうしてあげるのが親の責任だと思っている。被告が二男を引き取った場合,原告との面会交流を制限するつもりはない。
エ 被告の父母としても二男の引き取りには大歓迎である。被告の父は,長男と二男のために現役を退いたのであり,あと15年は育児支援に全精力を注ぐ。被告の母は,今後も仕事は続けていくが,長男と二男の監護に協力していく。
(3) その他
仮に2人の子の親権者が原告になった場合の被告と子らの面会交流については当然求める。方法等は改めて協議する必要があると考えている。

長男の状況
1 生活状況(被告及び被告の父母の陳述要旨)
長男は出生時から現在の被告宅で生活している。長男が2歳のときに,原告は生後5か月の二男を連れて転居した。原告と別居しても長男に大きな動揺はなかった。二男出生後,長男の養育は主に被告が担っていたので,原告が不在になってからも特段支障はなかった。
長男は,学校の持ち物の用意や着替えは自分でできるが,漢字ノートの忘れ物が続いた時期があったので,被告か被告の父が忘れ物はないか声かけをすることがある。
被告宅の近所に被告の妹家族が居住しており,妹宅には小学1年生の男の子がいる。午前7時半すぎにその従弟が迎えに来るので2人で登校している。小学校までは歩いて15分くらいかかり,交通量の多い地点を過ぎるまで,被告の父が見送っている。
下校時はクラスメイト2人と歩いて帰り,普段は午後3時半ころ,木曜日のみ午後4時ころ帰宅している。被告の母は,長男が帰宅する時間には必ず在宅するようにしており,長男は帰宅するなり「ただいま。おやつ。」と被告の母に呼びかける。被告の母は毎日1個だけおやつを用意している。
その後,長男は自主的に宿題を済ませ,午後4時半ころ,被告の父の車で空手の練習に行く。曜日は固定ではないが,月水木金曜日はたいてい空手に行っている。火曜日にはYMCAのスイミングと英語の教室があり,午後4時半すぎの送迎バスを利用する。いずれも終了時刻までに被告が迎えに行っている。
帰宅後,長男は自主トレをしたり,テレビゲームをしたりしている。テレビゲームについては,特に時間制限を設けておらず,被告が声をかけるとやめている。
学校生活,友達関係に問題はなく楽しそうに生活している。空手にも意欲的であり大会前になると週末も練習に行くことがある。

2 心身の状況(被告の陳述要旨)
長男の健康状態や発達に問題はなく,病気にかかることはほとんどない健康体である。性格は優しくひょうきん者である。学校では教室で遊んでいることが多いようだが,もっと外遊びもしてもらいたいと思う。

3 紛争に対する認識(被告の陳述要旨)
長男に対し,家族皆で暮らしていたが,原告が二男を連れてE市に行ったと説明している。普段,長男が原告のことを話題にしたり紛争について聞いてきたりすることはない。

4 原告との交流の状況(原告及び被告の陳述要旨)
月1回,被告が二男を迎えに行くために,長男を連れてE市に行っており,その際,原告と長男は顔を合わせているが,長男は車から降りないこともあり,原告とは会話を少しするかしないか程度の交流になっている。二男をE市に送り届けるときにも長男は同行しているが,そのときも原告とは同程度の交流である。
原告としては,長男が元気ならそれで良いので,G市E市間を車で二往復するのは大変なので,毎回同行させなくてもよいのではないかと考えている。

5 被告宅訪問時の長男の様子等
佐藤調査官及び齋藤調査官の2名で被告宅を訪問した。長男は玄関まで出て来たので挨拶すると,恥ずかしそうに挨拶に応じた。最初は,リビングで被告,長男及び被告の父母に調査の説明をしたり生活状況を確認したりした。リビングにある長男の学習机に「宿題,時間割,柔軟体操,腹筋,腕立て,足上げ,手横足横」と縦に書かれている紙が貼ってあったので,長男に聞くと,学校から帰宅してからやることをリストにしているとのことだった。空手の大会で賞を取ったことを話題にすると,長男は嬉しそうに話し,空手の真似をした。長男の緊張がほぐれてきたで,佐藤調査官が「家を案内してくれる?」と言うと,「こっちがトイレ,こっちがじいちゃんの部屋。」などと進んで案内した。佐藤調査官は長男と2階に上がり,齋藤調査官が1階で被告及び被告の父母と面接した。
2階の寝室で,空手のことを話題にすると,長男は空手の型をしたり逆立ちをしたり活発に動くようになった。学校では図工が好きで,家ではゲームで遊ぶのが好きという話題になったとき,「Dのゲームもある。」と自然と二男の名前が出た。
原告について思っていること知っていることを何でも自由に話してほしいと告げると,「眼鏡,頭が超バカ,ちょっと太ってる。」と言い,性格は,「俺がいるときだけ優しい。お父さんがいると俺がいてもお父さんの悪口を言う。」,「Dをさらっている。俺もさらおうとした。」と述べた。「なんでバカなの?」と尋ねると「分からん。」と言って,また逆立ちを始めた。「お母さんの話はしたくない?」と聞くと,「いや,別に。」と答えた。「お母さんにはどうして欲しい?」と聞くと,「今の悪口の逆をして欲しい。良いことを言って欲しい。それだけ。」と答えた。
「今度,裁判所で家族のことについて,C君の気持ちを聞きたいけど,いい?」と尋ねたところ,すんなり「いいよ~。」と言ってから,「それよりゲームしようよ。」と言ったので,しばらく一緒に遊んでからリビングに戻り,家庭訪問を終了した。

(略)小学校調査結果
以下,長男の担任教諭である(略)教諭の陳述要旨である。

1 出席状況
長男は2年(略)に在籍している。出席状況は良好で平成30年6月に体調不良の遅刻が1度あったのみで欠席はない。

2 基本的生活習慣
(1) 登校時の様子
挨拶はしっかりできる。朝から元気があり寝不足などの体調不良を感じることもない。
(2) 準備物,忘れ物等
教科書や体操服など授業に必要なものを忘れることはないが,ハンカチとティッシュはほとんど持ってこない。毎朝,健康観察のときにハンカチとティッシュをチエックするので本人も自覚しているはずだが改善されない。宿題については,プリント類は問題ないが漢字ノートをしていないことが多い。また,筆箱の中の鉛筆が丸いまま研がれていないことが多い。
漢字ノートの宿題については,保護者への連絡ノートに記載したら一旦改善されたが,時間が経つとまた忘れるようになった。
(3) 服装等
衣類は整っており清潔感がある。上靴もきれいに洗われている。
(4) 給食時の様子
好き嫌いなく完食しており,おかわりをすることもある。級友と楽しそうに食べており,食事マナーの問題もない。

3 授業態度,学習の習熟度等
授業態度は良く,板書もしっかりしている。意欲的に取り組む姿勢があり笑顔も見られる。皆の前で発表するのは苦手な方で積極的に挙手するタイプではないが,指名すればしっかりと発言できる。
学力は高い方で,特に読解力が高い。運動能力も高い。一方,作文を書いたり自分の気持ちを発表したりすることが苦手である。作文は白紙のことが一度あったので,問いかけたところ,書きたいことが頭に浮かぶが,どのように表現したらよいかが分からないようであった。

4 発育の状況
発達の問題は感じられず,年齢に応じた発達を遂げている。健康診断でも問題は指摘されていない。身長体重は,平成30年9月の時点で,身長125.5cm,体重25.5kgであった(参考:文部科学省平成28年度学校保健統計によれば,小学校2年生男子の平均身長は122.5cm,平均体重は24.0kgである。)。

5 性格・行動傾向
情緒は安定していて誰に対しても優しい。喜怒哀楽が表に出るタイプではない。自分から積極的に話しかける方ではないが,誰とでも自然に仲良くすることができる。自分の気持ちを表現するのが苦手であり,授業でも気持ちを尋ねると言葉に詰まって困った表情になることがある。
おとなしいので自己主張はしないものの,責任感や行動力はあるので,係活動など任された役割はしっかりと果たすことができる。

6 対人関係
幅広く遊ぶよりは特定の友人と過ごしていることが多く,昼休みに友人と遊んでいるときが一番楽しそうな笑顔をしている。外遊びよりは教室の中で遊ぶことが多い。対人トラブルを起こすようなタイプではなく,どちらかと言えば遠慮がちな方である。
教諭との関係に問題なく,過度に甘えたり反発したりすることはない。丁寧な言葉遣いで話をすることができる。

7 家庭の状況
(1) 給食費などの集金は必ず提出されているが,保護者の意向を確認するようなアンケート(例えば,授業の一環で行う「町探検」に付き添うことが可能かどうかを保護者に尋ねるもの)等の提出が遅れることがある。催促したところ被告の父から返答があった。下校時間に突然雨が降ってきたときに被告の父が傘を持ってきたことがあり,緊急避難訓練(家庭引き取り訓練)にも被告の父が対応したので,被告が対応できないときは被告の父がカバーしているようである。被告の母には会ったことがない。
(2) 授業参観や運動会は被告が参加している。被告は学校運営に協力的であり,学校との連絡体制にも問題はない。
(3) 長男が教諭に家族のことを話題にしたことはない。家族の話をたくさんする生徒もいるが,長男だけが特別不自然というわけでもない。

長男との面接結果
長男との面接は佐藤調査官が行った。
1 面接開始前の状況
長男は被告と2人で来庁した。冒頭は被告と一緒に児童室に案内した。長男と被告がバランスゲームを始めたので,その様子を見ていたところ,被告が調査官も参加できるように配慮したので,3人でバランスゲームをした。ひと段落すると,被告自ら立ち上がり,「よろしくお願いします。」と言って児童室を退室した。被告が退室することに長男は抵抗や不安を示すことはなかった。
2 長男との面接結果(約50分)
(1) 改めて調査官から自己紹介し,①父母が家族のことやこれからの子育てのことなどを裁判所で話し合っていること,②今の生活や父母のことについて長男の気持ちを聞きたいこと,③長男から聞いた話は父母にも伝わること,④言いたくないことは言わなくてよいことを平易な言葉で説明したところ,長男は理解を示し,「俺,前にもこの部屋来たことある。」と述べた。「そのときも家族の話をした?」と尋ねると「覚えていない。」とのことだった。
(2) 1日の生活スケジュールを確認したところ,被告及び被告の父母から聴取した内容と相違なかった。朝食は被告の父が作ったおにぎりと味噌汁を一人で食べることが多く,夕食は「思い出せない。」と述べたので,「どういう意味?」と尋ねると,夕食は毎日食べるが,何時ころに誰と食べることが多いか思い出せないと説明した。一人で食べることもあるか聞くと,「それはないな。あっお父さんかおじいちゃんかな,おじいちゃんと食べる方が多いかも。」と答えた。「おばあちゃんは?」と聞くと,「それはない。(略)だから。」と答えた。「昨日は何食べた?」と聞くと「思い出せない。」とのことだった。
日々の生活の中で楽しいこととしては,空手とゲームを挙げ,「ゲームが一番楽しい。」と言った。任天堂スイッチで遊ぶのが好きと述べたので「ゲームばかりしてると怒られない?」と尋ねたところ,被告の父が時間を計って終了を告げると説明した。空手は月水木金にあり,大会の前には土曜日に行くこともあると明るい表情で述べた。学校は楽しいと言い,仲の良い友達を尋ねると,すらすらと5人の名前を挙げ,休み時間に友達と遊ぶのが一番楽しいと述べた。最近嬉しかったことはあるか聞くと,空手の大会で銅メダルが取れたことだと述べた。一番褒めてくれたのは誰か聞くと,「お父さん」と答えた。
(3) 家族について聞くと,被告と被告の父母と暮らしていて,E市に原告,二男,原告の父母がいると説明した。「どんなお父さん?」と尋ねると,「身体が大きい方なのかどうか分からなくて,『待って』が口癖で,仕事が忙しい人。」と答えた。「お母さんは?」と尋ねると,「眼鏡してて,太ってて,バカ。」と答えた。「バカって?」と聞くと,「なんとなく,そんな感じ。」と言うので,何かあったわけではないのか尋ねると,「弟をさらった。俺のこともさらおうとした。」と答えた。その出来事を覚えているわけではなく,被告から教えてもらったことだと説明した。被告の父については「優しい,工作できるし何でも知ってる。」,被告の母は「ほとんど家にいない。」と答えた。原告の父は「覚えていない。」,原告の母は「弟を引っ張って連れて行こうとした。」と述べたが具体的な出来事は忘れたとのことだった。
ホワイトボードに2つの家を書いて,一つに「G」,「E」と書いたところ,「Gは漢字で書ける。」と身を乗り出してきて漢字を書いた。それぞれの家に住んでいる人の名前を書いて長男に見せ,「これからこうなったらいいなあと思うことはある?」と尋ねると,二男を指さして,「Dはこっち(G市)がいい。」と答えた。理由を尋ねると,「賑やかになる。二人でゲームできるし,二人で遊べるから楽しい。」と言い,「学校も一緒にいけるし。」と付け加えた。「きょうだい喧嘩は大丈夫?」と聞くと,「まあ,けんかもするけど。」とにやっと笑って答えた。次に,E市の家を指して,「お母さんはこのまま?」と尋ねたところ,「悪いこと止めたらこっち(G市の家)に来ていい。」と答えたので,「悪いことって?」と聞くと,「俺をさらったりすること。」とすぐに答えた。「他には?」と聞くと,ほかにはないと述べた。「どんなお母さんなの?」と尋ねると,「特にない。嫌い。」と言い,理由は「俺をさらったりするから。」と同じ理由を述べた。父母に直してもらいたいことは双方ともに特にないと述べた。
二男同様,長男もドラゴンボールが好きとのことだったので,「もし神龍が願い事叶えてくれるとしたらどうする?」と尋ねたところ,①俺と弟がけんかしないように,②俺と弟を悟空にしてくれ,③どこでもインターネットが使えるようにしてくれと述べた。①は些細なことでけんかになってしまうから,②は二男と一緒に修行して強くなりたい,③はどこでもゲームができるからと説明した。
原告との面会交流について,最近は顔を合わせる程度の交流になっているが,そのことをどう思うか尋ねたところ,「別に。」と答えた。前は遊んでいた時期があったと述べたので,以前のように過ごしたいと思うことはないか尋ねると,「ない。」と答えた。原告の方から長男と遊んだりしたいと言われたらどうするかという質問に対しては,「遊んでもいい。」と答えた。
困ったときは誰に相談しやすいか尋ねると,「父ちゃん。」と答え,自分のこと守ってくれると述べた。被告が怒ることはあるか尋ねると,「怒るとパワーが出るから恐竜みたい。」と笑って答えた。
(4) 最後に長男と面接内容を振り返り,非開示希望や言い足りないことを確認したところ,いずれもないとのことだったので,面接を終了した。

ニ男の状況
1 生活状況(原告及び原告の父母の陳述要旨)
出生後,被告宅において,原告,被告,長男及び被告の父母と生活していたが,生後5か月時に原告と被告が別居することとなり,二男は原告及び原告の父母と原告宅で生活するようになった。
「幼稚園がある日は,午前6時30分頃に起こすが,日によってはぐずることもあり,遅くても午前7時30分には起床させている。小学校に入学する前に起床時間を一定に整えさせたいと考えている。朝食は,ご飯,味噌汁,ヨーグルト,パン,うどんなどで,原告に「食べさせて。」と甘えてくるときもある。
帰宅後はゲームをして遊んでいることが多い。原告宅にはタブレット,任天堂スイッチ,プレイステーション4,任天堂DSがある。公文に通っていたが,あまりにも嫌がって暴れるので,そこまで無理して習わせる必要はないと考えて平成30年春先に辞めさせた。現在のところ,ほかの習い事を始める予定はない。
毎週というわけではないが,金曜日は,原告の中学時代の同級生(女性)が子どもを連れて遊びにくることが多い。小学4年生の男子と小学2年生の女子がおり,二男は楽しそうに遊んでもらっている。
二男を他人に預けたり一人で留守番をさせたりすることはなく,基本的には原告と一緒に行動している。
2 心身の状況(原告の陳述要旨)
基本的には健康体で病気は少ないが,平成30年5月に嘔吐が続き低血糖と脱水症状で2日入院をした。病院には原告がずっと付き添っていた。
平成28年にアスペルガー障害やADHDの疑いを指摘されたことから何度か精神科に通院したが,特に問題はないとされたので,平成30年春以降は通院していない。幼稚園での問題行動もないようである。今後,気になる言動があれば再度診察を受けようと考えている。
乳離れが遅かった方で,現在も,原告の乳房を触ったり服の上から吸いつく真似をしたりすることがある。排便は平成30年5月に自立してできるようになった。
3 紛争に対する認識
普段,二男が被告のことを話題にすることはないし,原告から敢えて話題にすることもない。今回,調査官調査があるので,二男には改めて「お父さんとお母さんはけんかをしている。」と説明をした。二男は「なんでけんかしているの?」と言ったので,「お父さんがお母さんを殴るからだよ。」説明したところ,「そりゃー悪いなー。」とあっけらかんと述べていた。

4 被告との交流の状況(原告,被告及び被告の父母の陳述)
月1回,被告がE市まで二男を迎えに来てG市に連れて行き,翌日,E市まで送り届ける1泊2日の面会交流がこの1年の基本形になっている。
被告及び被告の父母によれば,二男は会うなり「お父さーん,じいちゃーん。」と叫んで駆け寄ってくる。長男はお兄ちゃんの顔になり,ふたりで仲よく遊んでいる。二男はやんちゃなところがあり,被告の母の仕事場に行ったとき,「くそばばー」と連呼したことがあり,言葉遣いが汚いと感じたことがある。
原告によれば,面会交流から帰ってくると,被告が原告のことを悪く言っていたとのことで,ときどき気持ちが落ち着かない様子が見受けられる。そのため,面会交流後に,従姉妹(原告の弟の子,小学4年女子,小学1年女子)と遊ばせて,気分を発散させることもある。被告が原告の悪口を言っていたと聞かされたときには「お父さん悪いね。」とだけ言って,あれこれ言わないようにしている。
被告と二男の電話(ハングアウト)での交流について,被告は原告が妨害していると考えている。一方,原告は,二男の意向に任せたいと考えており,原告から積極的に働きかけるつもりはないが妨害するつもりもないと言う。二男は,被告に電話したいと言い出すときがあるが,だいたいがゲームの名前を知りたいときで,名前を思い出すと「もういいや。」となる。

5 原告宅訪問時の二男の様子等
佐藤調査官及び齋藤調査官の2名で原告宅を訪問した。二男に挨拶したところ挨拶には応じたが落ち着きなく家の中をうろうろしたり,原告や原告の母に抱っこされたりした。冒頭,リビングで原告,二男及び原告の父母に自己紹介や調査の説明を始めたところ,原告の父が被告のことを「最高裁にまで文句を言う奴。どうしようもない。」と評した。二男はリビングにじっとしておらず隣の仏間に行ったり台所の方に行ったりしたので,佐藤調査官が二男に話しかけたり遊びに誘ったりして,齋藤調査官が原告の父母と面接した。
佐藤調査官は,二男及び原告と二男の寝室に行き,「どんなゲーム持ってるの?」,「何して遊ぶのが好き?」などと尋ねた。二男は,調査官の質問に答えるときもあれば,無視してタブレットのゲームをしていることがあった。原告から注意されるとタブレットから目を離すが,すぐにゲームに戻ることの繰り返しであった。また,原告の膝の上に座ることが多く,時々,原告の乳房を触っていた。
佐藤調査官は,二男にゲームを教えてもらったりしながら二男への質問を続けたが,二男は無視することの方が多かったので,「今日は一緒に遊んで,今度はゲームはしないでお話できる?」と尋ねたところ,「いいよー。」とぶっきらぼうに返事した。タブレットのゲームがひと段落すると,二男は仏間に行き,ベイブレードを取り出して調査官にもベイブレードの遊び方を教えてくれたので,原告も交えて3人で戦った。
原告の父母との面接が終了したころを見図り二男とリビングに戻って,再度,裁判所での面接を約束して家庭訪問を終了した。

(略)幼稚園調査結果
以下,二男の担任教諭である(略)主任教諭の陳述要旨である。
1 出席状況
二男は年長組に在籍しており来春に卒園を控えている。平成30年4月以降,欠席は5月に3日のみで嘔吐下痢によるものであった。嘔吐下痢が流行っている時期でほかの園児も数名欠席していた。欠席の際は,必ず原告から電話連絡がある。遅刻や早退はない。
2 基本的生活習慣
(1) 登園時の様子
二男は,午前8時から8時30分の間に登園している。原告と2人で登園することが多いが,原告が先に出勤していれば原告の父母と登園する。ぐずることはなく,朝から表情が良く笑顔である。
(2) 準備物,忘れ物等
持ち物は十分用意されており,忘れ物はほとんどしない。身の回りの整頓や片付けは一人でできている。
(3) 服装等
衣類は清潔であり身なりは整っている。
(4) 給食時の様子
給食は完食しておりおかわりをすることもある。苦手な野菜でも食べるように家庭で躾を受けているようで頑張って最後まで食べている。食事マナーの問題はない。木曜日は弁当を持参する日になっており,栄養バランスが整った弁当が準備されている。
3 園内での状況
(1) 日課には集中して取り組んでおり,立ち歩きや問題行動は見られない。工作が特に好きで,もくもくと作業する。作業は細かい方だが,子どもらしいのびのびした表現もできる。
(2) 苦手なことややりたくないことであっても,わがままを言うことはなく,周囲の様子を見ながら自分なりに覚えようとしている。
(3) 自由時間は,サッカー,鬼ごっこ,ブロック遊びをしていることが多い。一人でぽつんとしていることはなく,友達と仲良く遊べている。
(4) 迎えは午後5時ころで原告か原告の父母が来ている。原告より原告の父母が迎えに来る方が多い。最近は二男の鉄棒の練習に原告や原告の父母が付き合っている光景がよく見られた。
4 発育の状況
平成30年10月の身体測定の結果は,身長111.0cm,体重17kgであった(参考:文部科学省学校保健統計によれば,幼稚園年長男子の平均身長は110.4cm,体重18.9kgである。)。
健康診断及び歯科検診で異常は指摘されていない。母から「アスペルガー障害とADHDの可能性がある。」と病院で指摘されたことは聞いているが,園での様子を見ている限りではそのような特性はないように思われる。その後の受診の結果については聞いていない。
5 性格,対人関係等
明るく活発であるが,慎重で心配性な面も持ち合わせている。初対面の人や初めてチャレンジすることには身構えるタイプである。安心が確認できると,意欲的に行動できる。
他児との関係では,基本的には穏やかでひょうきんであり友達は多い。玩具の取り合いなどで言い争いになったときには,自分の意見をしっかり言うが,相手の話も聞くことができるので,大きなトラブルに発展することはない。正義感が強く,トラブルが起きると注意したり解決策を提案したりもしている。自分からトラブルを起こすタイプではなく,粗暴な行為はない。
6 保護者(原告及び原告の父母)について
連絡帳はきちんと書かれており,園から配布するプリント類にも目を通しているので,連携が取れている。園の行事運営にも協力的である。
7 その他
被告との面会交流について,「○○に行ってきた。○○を買ってもらった。」などと楽しそうに話をすることがある。一方,面会交流後に不安定になったときもあった。具体的には,園では母の希望により母の旧姓である「(略)」としているが,父から「(略)」と言われたようで,「名前が2つある。」と困惑していたことがあった。
長男のことは「G市のお兄ちゃん」と呼んでおり,長男と遊んだことを楽しそうに話すことがある。

二男との面接結果
二男との面接は佐藤調査官が行った。
1 面接開始前の状況
二男は原告と2人で来庁した。冒頭は原告と一緒に児童室に案内したところ,すぐに児童室の玩具に興味を示し,一人で遊び始めたので,原告は部屋の隅にあるソファーに座った。
二男は,調査官のことを覚えていて,「この前,教えてくれたラーメンおいしかったよ。」と言うと,にこっと笑った。二男がいくつかの玩具を取り出してくると,原告は立ち上がり,調査官も加わって3人でボードゲームなどをした。10分ほどしてから,二男に調査官と2人で面接をしたいことを告げたところ,すんなり了解が得られ,原告が退室する際も抵抗や不安を示すことはなかった。
2 二男との面接結果(約40分)
(1) 改めて調査官から自己紹介し,①父母が家族のことやこれからの子育てのことなどを裁判所で話し合っていること,②今の生活や父母のことについて二男の気持ちを聞きたいこと,③二男から聞いた話は父母にも伝わること,④言いたくないことは言わなくてよいことを二男が理解できるように平易な言葉で説明した。二男は「だいたい分かった。」と答えたので,「どこが難しかった?」と尋ねると,「大丈夫。」と答えた。分からないときは何でも言ってもらいたいことを告げてから面接を始めた。
(2) 「幼稚園はどう?」と尋ねると「楽しい。」とすぐに答え,最近,運動会があったことや練習で頑張ったことを明るい表情で述べた。先生や友達との関係で困っていることもないとのことだった。幼稚園での過ごし方を話している途中で,先ほどまで遊んでいた玩具の方に近寄っていき,ブロックやミニカーを触り始めた。
幼稚園から帰宅後や休日の過ごし方について尋ねたところ,ゲームしたり従姉妹と遊んだり,原告と遊んだりしていると答えた。「一人でいることが多い?誰かといることが多い?」と尋ねると「お母さん。」と答えた。「何しているときが楽しい?」と聞くと「分からん。」と即答したので,「分からない?」と再度聞くと,ちょっと考え,「ゲーム。」と答えた。「つまんないなあとか寂しいなあとか思うことある?」という問いには「ない。」とあっさり答えた。
(3) ブロック遊びに気を取られがちでおざなりな印象があったため,ホワイトボードに「D,(略)幼稚園,年長さん」と平仮名で書くと,二男は興味を示し,ホワイトボードの近くに来て,当職と横並びに座った。「これで合ってる?」と尋ねると,「(本姓)じゃない。(被告の旧姓)。」と答えた。「そうか。(本姓)じゃないんだ。」と言うと,「(本姓)は,お父さんが勝手につけた名前。」と述べた。「(被告の旧姓)Dが自分の名前?」と問うと,領いた。
ホワイトボードの空いているスペースを指さして,「D君の家族は誰がいるか書ける?」と尋ねると「家族忘れたー。」と無表情で言い放った。「今は誰と一緒に暮らしてるの?」と聞くと,原告と原告の父母を挙げ,ホワイトボードに「おかあさん,おじいちゃん,おばあちゃん」と書いた。「離れて暮らしている家族は?」と聞くと,被告と長男を挙げ,「おとうさん,(長男の名前)にいちゃん」と書いた。「一緒に暮らしている家族と離れて暮らしている家族をそれぞれ円で囲み,まず原告はどんな人か尋ねたところ,「わからん。」と即答した。「D君はお母さんのことどう思う?」と続けると,「好き。」と答えた。次に,被告はどんな人か尋ねると,「お母さんに意地悪するー。」とすぐに答えたので,「意地悪って?」と聞くと,「お母さんのパソコンにウイルス送って壊した。」と述べた。どこで知ったのか確認すると原告が自宅で怒っていたから知ったと説明した。「D君にも意地悪するの?」と聞くと,「俺にはしない。」と答えたので,「どんなお父さん?」と尋ねると「優しい。でも,お母さんと会うとすぐけんか。」と答えた。「お父さんとお母さんのけんかはどう思う?」と尋ねると,「嫌。」と即答し,「嫌な気持ちになるの?」と確認すると領いた。長男はどんな兄か尋ねると,「好きだけど,ゲームですぐけんかになる。」と答え,けんかになるといつも二男が負けるので悔しいと説明した。「お母さん,お父さんのどんなとこが好き?」と聞くと「分からん。」と即答し,「直して欲しいところは?」と聞いても同様だった。
(4) ホワイトボードに書かれている家族を指さして,「家族がこうなったらいいなあって思うことはある?」と尋ねたところ,「今のままでいい。」とあっさり答えた。「今のまま?」と繰り返すと領いた。そう思う理由については「分からん。」と答えたので,「お父さんとお母さんがけんかしているのは関係ある?」と聞くと,「分からん。多分,そう。」と答えた。
ホワイトボードの家族が書かれている2つの円を指さして,「D君が見てて,仲が良い人,けんかしている人を教えて?」と尋ねたところ,二男と仲が悪い人はいないが,原告と被告,被告と原告の父の仲が悪いと答えた。仲が悪い理由は「分からん。」と答えたので,「お父さんはお母さんのこと何て呼んでる?」と尋ねると「嘘つき娘。」と答えた。「なんで嘘つきなの?」と尋ねると「分からん。」とぶっきらぼうに答えたので,「D君から見て,お母さんは嘘つきなの?」と問うと「違う。」と答えた。「お母さんはお父さんのこと何て呼んでるの?」と尋ねると「お父さん。」で,原告の父は被告のことを「嫌い。」と言うことがあると述べたので,原告宅で被告のことが話題になるときがあるのか尋ねたところ,「分からん。」とぶっきらぼうに答えた。「お母さんとかおじいちゃんがお父さんの悪口をD君に言ったりすることがあるの?」と聞くと「ない。」と答え,「D君には言わないけど,おじいちゃんとかお母さんがお父さんのことを悪く言ってるのが聞こえることがあるの?」と「そう。怒ってる。」と答えた。怒っている理由については「分からん。」と答えた。
「D君はたまにお父さんと会ってるけど,どう?」と尋ねると,「楽しい。」と答えた。具体的にはゲームといろんな所に行けるから。長男と遊ぶことも楽しいと述べた。被告との電話について尋ねると,「電話はしなくていい。」と答え,理由は「分からん。」と答えた。原告から電話したらどうかと言われることについては,「別に電話しなくていい。」と答えた。
「家族のことでこうなったらいいなあって思うことはある?」と尋ねると,「最初と同じ暮らしがしたいだけ。」と答えたので,「最初って?」と尋ねると,「みんなで暮らしてた。」と答えた。「いつの話?」と問うと「分からん。」と答えた。「みんなで暮らしていたのって,D君が赤ちゃんのときだったと思うけど,覚えてるの?」と尋ねると「いい暮らしだった。」とさらりと答え,誰かに教えてもらったわけではないという。
二男と遊んでいるときにアニメの「ドラゴンボール」が好きだと述べていたので,「ドラゴンボールの神龍に家族のことで何かお願いできるとしたらどうする?」と聞くと,「みんなが私と同じ家族になりますように。」と答えた。家族仲良く一緒に暮らしたいっていう気持ちか確認すると,領いた。「D君と同じ気持ちの人はほかにいる?」と聞くと,「誰もおらん。」とぶっきらぼうに答えた。
「そろそろ遊びたい。」と言い出したので,「誰と遊んでいるときが楽しい?」と聞くと,原告の友人の子の名前を挙げた。最後に,面接で話した内容について秘密したいことはあるか確認したところ,ないと答えたので,二男との面接を終了し,原告を待合室から児童室に呼んだ。原告は二男のボードゲームに少し付き合ってから,まだ遊びたがる二男を諭して退庁した。

調査官の意見
1 結論
原告による二男の監護状況,被告による長男の監護状況について,子らの心情も踏まえて検討した結果,子の福祉を大きく害する状況ではないと考える。

2 理由
(1) 長男は,被告及び被告の父母の監護の下,問題なく成長している。被告が対応できない部分は,時間の融通が効く被告の父がカバーしており,長男の生活状況や被告と長男の関係性に問題は見られない。小学校教諭からも長男の学校生活や保護者の状況について,忘れ物以外は特段の問題は指摘されておらず,対人関係のトラブルはなく情緒面でも安定しているとされている。
(2) 二男も,原告及び原告の父母の下,問題なく成長している。幼稚園の送迎や夕食作りを原告の父母が担うことがあるものの,基本的には原告が主体となって二男を養育しており,二男の生活状況や原告と二男の関係性に問題は見られない。幼稚園教諭からも二男の幼稚園での状況や保護者の状況について問題は指摘されていない。
(3) 長男,二男ともに同居親に親和的であるが別居親に批判的な心情を抱いている。長男は,原告の連れ去り行為を特に批判しており,原告のことを見下すような発言も見られる。長男の発達段階は,道徳的判断ができるようになるが,部分的な情報で白か黒か断定的な判断をしがちでもある。原告が悪いことをしなければG市に来てもいいと述べたり,原告から誘われれば原告と遊んでもいいと述べたりしていることからも,原告の全てを拒否しているわけではない。ただし,現状,原告は,被告との関係に疲弊して長男との面会交流に意欲的になれておらず,強い監護意欲を示してもいないことから,原告が長男を監護養育するのは現実的ではない。
一方,二男は,被告は原告に意地悪をすると捉えている。原告と被告に加えて原告の父と被告の関係が悪いことも感じ取っており,紛争状況に対しては「嫌。」と即答している。二男の年齢では,空想と現実の境目が曖昧になりやすいため,両親の不和に罪悪感を抱いたり,和合ファンタジーを抱いたりするといわれる。実際,面接時に二男は「みんなが私と同じ家族になりますように。」と述べた。しかし,二男は,家族のことは忘れたと述べたり,自分と同じ気持ちの人はいないとぶっきらぼうに述べたりしており,これは家族に期待できない無力感や疎外感が現れたものと思われる。二男が今のままの生活でいいと述べているのは,紛争の原因となる被告と距離を置いて原告との生活を続けたいという心情が現れたものと考える。
きょうだい分離について,長男と二男の関係が良好であることは原告,被告ともに認めており,長男は二男と一緒に生活したい心情を語っている。しかしながら,長男が原告に,二男が被告に否定的な感情を抱いているいびつな現状では,きょうだいを一緒に生活させることによって,子らと原告の関係が希薄になる恐れがあり,かえって子の福祉を害する結果になりかねないので,現状の監護状況に大きな問題はないことも踏まえると敢えて環境を変える必要性はないと考える。